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§はじめに 今回の調査は、3年前の10万人調査の引き続くものであるが、わずか2月間に7万 人を超して回収された。自営業者の健康状態がどうなっているのか、前回の調査で現 れた健康破壊の深刻さとそれが営業不振と労働実態によって生じていることが再度証 明されるのか、3年間の経過でどう変化しているのか、が注目点である。その意味 で、結果をみると、前回の調査結果が実に見事に裏づけがなされたたことと業種分析 によって一層、健康と営業、労働が関係することが示された。2回の調査全体によっ て、我が国の零細事業所の不健康実態が鮮明に明らかにされたといって良い。 §1995年調査の概要(日本産業衛生学会誌1998;40:222-226 )。 (1)労働時間が全般に長く、長い群程、加えて休日も取れない状況にあった。1日 14時間以上働く群の3/4は、「翌日に持ち越す疲労」を訴えていた。更に、労働時 間が増える程に「健康不安」「翌日に持ち越す疲労」「医師に休めと言われても休め ず」「健診を3年以上受けず」の比率が増す事実が見出された。 (2)対象事業所の62%は、前年より売上げを減らしていたが、売上げが上がった 群、同じ群、そして売上げがより減少するにつれ「健康不安」「通院中の病気があ る」「1年以内の入院」「医師に休めと言われた人」「休めと言われても仕事で休め なかった」いずれも増加していた。 (3)調査前1年間に入院した約8000人の内、73%程の人は、「医師に休めと言われ ながら、仕事が理由で休めなかった」人であり、そういう状況でない中で入院した人 達の3倍に達していた。 いずれも、我が国で初めて明らかにされた事実であり、労働条件と営業、暮らしが 如何に健康状態に関わっているか、そして「業者にも十分な健診機会と補助を」「国 保にも傷病手当を設け安心して療養出来るように」という改善要求の妥当性と緊急性 が示された。 §1998年調査の概要 今回の調査における健康項目は、前回と全く同じである。回答数も違うしどの位同 じ人が含まれているかは明らかでは無いが、10万、7.2 万人という規模の大きさから みて十分比較出来ると考えられる。 (A)労働時間、睡眠、休日、売上げ状況と健康項目について (1)労働時間と睡眠、休日の関係 1)1日の労働者時間長い群では、睡眠時間が少ない。 14時間超群の40.1%が、睡眠5時間未満である。67.2%が、睡眠6時間未 満で、12時間超群の52.1%が、睡眠6時間未満である。 2)1日の労働者時間長い群では、休日も無い人が多い 14時間超群において、休日を全く取っていないとするものが29.7%と、他の労 働時間より飛び抜けて多い。更に、労働時間が長くなる程、休日を取っていない人の 割合が高率になっている。 (2)売上げ悪化と健康項目の関係(表1) 1)健康不安、疲労、通院中の病気には、売上げの影響が大 昨年比で、売上げの悪化が目立つ程、「健康不安」「翌日に持ち越す疲労」「通院中 の病気のある」は高率になっている。 2)入院、医師から安めの指示、仕事で休めずは、売上げの影響が大きい 昨年比で、売上げの悪化が目立つ程、「1年以内で、入院した人」「医師により休め の指示有り」「休めと指示されても仕事で休めず」という人も高率であった。
(3)長時間労働と健康項目との関係 労働時間が長い方が、「翌日に持ち越す疲労」が高率で、「健康不安」も高率のなる傾向にあった。長時間労働は、健康不安、疲労に影響している。 (4)睡眠不足と健康項目との関係 睡眠時間が短い程「健康不安」「翌日に持ち越す疲労」が高率である。睡眠不足は健康不安、疲労に影響している。 (B)産業別の傾向 (1)大分類における特徴(表2) 1)「健康不安」は、全体が6割台で差が無く高率であるが、料理・飲食関係が最高 率で65.4%。 2)「翌日に持ち越す疲労」も料理・飲食関係が最高率で67.9%、平均より6 %、最低より約10%高い。 3)「通院中の病気有り」は、全体が4割の後半で余り差無いが、製造加工が最高率 で、・49.4%。 4)「1年内に入院有り」は、卸・小売りが最高率で、9.2%ながら、全体ほとん ど同じ水準にある。 5)「医師に休めの指示有り」は、料理・飲食関係36.3が最高率。全体は3割前 半で余り差無し。 6)「休めの指示受けながら、仕事で休めず」は、料理・飲食が19.4%で最高 率。全体が、10%後半で、差余りなし。 7)「医師に休めと言われた人の中で、仕事の理由で休めなかったことある」も、料 理・飲食関係が最高率55.3%で、平均より数%、最低より8%高率。全体は、4 割台後半にある。
(表2) (2)より細かい産業・職種別の傾向 1)「健康不安」では、平均より10%超す業種は無い。書籍販売の68.3%、次 いで代行業の67.3%、料飲店の66.8%が続く。不動産とコンビにが65.2 %。 2)「翌日へ疲労蓄積」では、料飲店が、69.5%でトップ、次も、同種のレスト ランの66.9%、更に、情報の66.7%、コンビに65.2%、食料品製造が6 5%と続くが、全体に平均との差は少ない。 3)「通院中の病気有り」では、不動産が、57.1%とトップ、食料品製造と各種 代行業が54.8%、玩具・雑貨製造が54.3%、青果販売53.2%と続く。 4)「1年以内に入院有り」は、代行業が、14.4%でトップ、不動産13.2 %、漁業12.4%、玩具・雑貨製造12%、精肉販売11.9%と続く。 5)「医師からの休めの指示有り」は、食料品製造41.4%がトップ、次いで不動 産の38.6%、玩具・雑貨製造の38.5%、料飲店37.5%、電気機器製造3 7%となる。 6)「医師に休めの指示有る人の中で、仕事で休まず」は、代行業が67.7%と群 を抜く。喫茶店55.4%、料飲店54%、金物、工具販売54%、鮮魚販売53. 6%が続く。 7)「健診3年以上受けず」は、喫茶店が39.6%でトップ、コンビにが38.5 %で続き、後は、情報の38.1%、医療機関の38%、鮮魚37.1%と続く。 (3)健康項目の上位の登場回数の検討 各健康項目につき上位5位までの業種を挙げ、その登場回数を多い順にみてみると、 4回は、代行業、不動産、料飲店、食料品製造、3回は、玩具・雑貨製造、コンビ に、2回は、喫茶店、情報、鮮魚販売、と一部の業種に上位が集中する傾向をみせ た。1回は、青果販売、精肉販売、金物・工具販売で小売り業が顔を出した。大まか な産業・業種の傾向では、サ−ビス関連と飲食関連に小売業が問題の多いところとも いえる。 これらの業種の健康項目が悪い背景を検討してみると、表3のようになる。「休日が 無い」「1日労働時間が12時間以上」「睡眠時間6時間未満」「売上げ昨年比3割以 上減少」を背景因子として取り挙げ、健康項目に大きく影響する年齢を記した。調査 票では、年代を問うているので、年代の中央値を代表値として計算した推定平均値を 示した。
(表3) まず気付くことは、上位に多く顔を出している業種は、「休日休まない」「長時間 労働」「睡眠不足」「売上げ減」の比率が平均より高い(ゴジック)のが、不動産、 玩具・雑貨製造、鮮魚販売以外は全て3つ以上認められている。この点は、自営業者 の健康障害の要因が、労働・生活の状況の困難さにあることが見事に示された。除い た3職種は、平均年齢が60歳が2つあること57歳と高いので、年齢をおして自営業を 続けることに原因があると推定される。 今回の調査は、前回の10万人調査の示した全てを裏づけた。しかも、この間に、 全商連共済会は、健診の内容の充実をはかり、受診率の向上に力を入れてきた。種々 の調査活動にも力を入れ、より一層多面的に自営業者の健康の実態を示してきた。高 齢化する業者は、深刻な不況や貸し渋り、後継者の展望の無い中、際立った健康破壊 状態にあるが、比較的若い業種においても、長時間労働や休日返上、睡眠不足の下 で、蓄積的疲労となり、健康不安にかられ、病をおして働き続け、入院しても元気に 現場に戻れず、ごく短い期間で死も迎えたり、あるいは自殺者を出したりしている事 実が我々の前に突きつけられている。 前回の調査報告集にも紹介したが、自営業者の中にも「自営主」「自営主の妻」 「その家族」「社長」「従業員」によっても健康を阻害している要因も少しづつ違っ ていて、健康障害には、労働条件やくらしの厳しさ、生活内容が深く関わっているこ とが示されている。「成人病」に代わって使われている「生活習慣病」という概念 は、どちらかという病気の原因を個人の嗜好や運動不足に帰結してしまう傾向が強 い。2回の全国調査等全商連共済会での調査は営業成績や労働条件は、健康を阻害し ている要因にとして大きく関わっていることが示された。こうした背景に対しての活 動を引き続き強化する必要がある。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||